泣き叫ぶわが子へ 「癇癪」の理由と優しいアプローチ

子育て中の親御さんにとって、大声で泣いたり、激しく奇声を発したり、物を投げたりする「癇癪(かんしゃく)」への対応は、最もエネルギーを消耗する悩みの一つですよね。

癇癪は、1歳頃から始まり、自分の意見を主張し始める2歳から3歳頃に激しくなることが多いです。しかし、小学生になっても、あるいは大人になっても続くことがあり、その激しい表れ方に、親御さんや周りの方が心身ともに疲弊してしまうことも少なくありません。

「どうしてうちの子だけ、こんなに激しいのだろう」「この対応で本当に合っているのだろうか」と、自分を責めてしまうかもしれません。しかし、癇癪は子どもが自分の気持ちやニーズを表現する、一つの「成長の過程」なのです。

この記事では、癇癪が起きる原因を理解し、親子の心をつなぐ具体的なアプローチと予防法をご紹介します。


1. そもそも「癇癪」はなぜ起こるのか?

癇癪とは、子どもが自分の感情や欲求をうまく言葉で表現できないときに、それが爆発的に表出される状態を指します。特に言語能力が発達途上にある幼児期には、癇癪を通じて「これを伝えたい」というSOSを出していることがよくあります。

1-1. 癇癪の引き金となる四つの要因

癇癪は、一つの原因で起きるのではなく、複数の要因が重なり合って引き起こされます。

  1. 生理的要因:子ども自身の空腹、疲労、睡眠不足など、体調の不調。
  2. 心理的要因:「こうしたい」という欲求が満たされない、何かを失敗したことへのイライラ、新しい環境や状況に対する不安や恐れ。
  3. 発達的要因:感情コントロールや問題解決能力がまだ未熟であること。特に発達に特性があるお子さんの場合、感情があふれやすい傾向があります。
  4. 環境的要因:騒がしい場所、過剰な刺激(光や音)、急な予定の変更など、子どもが適応するのが難しい場面。

1-2. 癇癪は成長のサイン

癇癪は、子どもが自分の意見を持ち始め、「自分の思い通りにしたい」という自律性が芽生えた証拠でもあります。激しい行動として現れても、成長の過程で自然に現れるものだと理解することで、親の心も少し軽くなります。


2. 癇癪が起きたときの「親がすべき基本対応」

癇癪が始まったとき、親は反射的に感情的になったり、早く止めようと焦ったりしがちです。しかし、親の反応で子どもの不安が増し、癇癪が長引くことがあります。

2-1. 親の心と体の安全を確保する

  1. 冷静さを保つ:まず親自身が深呼吸をし、自分の感情を落ち着かせることが大切です。親が冷静でいることで、子どもも安心感を取り戻しやすくなります。
  2. 安全を確保:子どもが物を投げたり、自分や他人を傷つけたりしそうになったら、まず周囲の安全を確保します。必要であれば、子どもをクッションのある安全な場所に移動させましょう。
  3. 距離を取る:親自身が感情的になりそうになったら、一旦その場を離れて(必ず安全を確認した上で)、自分の感情をリセットする時間を持っても大丈夫です。

2-2. 感情の受け止めと「境界線」のバランス

  • 感情を受け止める:「そんなに泣かないで」「もういい加減にして」といった、子どもの感情を否定する言葉は避けましょう。代わりに、「怒っているんだね」「すごく悲しい気持ちなんだね」と言葉にして、子どもの感情を受け止めましょう。これにより、子どもは「自分の気持ちを理解されている」と感じ、安心感を得られます。
  • 理由はその場で探らない:癇癪中に、「どうしてこんなことをするの?」と問い詰めるのは逆効果です。子どもが冷静になるまで待ち、落ち着いた後で理由を聞く方が効果的です。
  • 行動には制限を設ける:感情に共感することは重要ですが、全てを許容する必要はありません。「怒ってもいいけど、物を投げるのはやめようね」と伝えることで、感情を認めつつ、行動に制限を設けることができます。

3. 癇癪を減らすための予防的アプローチ

癇癪を完全に防ぐことはできませんが、頻度や激しさを減らすために、日頃から以下のような予防策を講じることができます。

3-1. 生活と時間の見通しを作る

  • 予測可能な生活リズム:日々の食事、睡眠、遊びの時間を規則正しく整えることで、子どもは安心感を持つことができます。
  • 予定の予告:発達に特性があるお子さんは、急な予定の変更が苦手です。「あと5分で遊びを終わりにして、お風呂に入るよ」といったように、事前に予告し、心の準備を促しましょう。タイマーなど、視覚的に分かりやすいツールを使うことも有効です。

3-2. 自主性を育み、我慢を教える経験

  • 選択肢を与える:「自分で選べる」と感じることは、子どもの自主性を育み、フラストレーションを減らします。「青い服と赤い服、どちらを着たい?」と選択肢を与えることで、癇癪の予防につながります。
  • 我慢の経験を積ませる:思い通りにならなかったときに、少しずつ我慢する経験をさせることも大切です。この経験が、社会のルールを学び、集団になじめるようになるための土台となります。

3-3. 感情を言葉で表現する練習をする

  • 感情の言葉がけ:日常生活の中で、「今、どんな気持ち?」と問いかけたり、「ママも今日は疲れて、イライラしちゃったよ」と親自身の感情を言葉にしたりすることで、子どもは感情表現の方法を学びます。

目次

4. 事例別対応:ご家庭でありがちなケース

癇癪が起きた際の対応は、その原因によって変える必要があります。

4-1. 事例:やりたい活動を中断させると、暴言や手が出る

好きなことに夢中になっていると、時間の感覚がなくなり、途中でやめることが困難になり、中断させようとすると暴力が出てしまうことがあります。

  • 対応策:活動を始める前に、「何時まで」または「タイマーで30分」と具体的に時間を決めて取り組みます。タイマーを使用し、鳴ったら切り替えるというように視覚的に分かりやすくすることも有効です。より効果があるのは、一緒に時間を決めることです。自分で決めた時間は切り上げられる理由にもなります。

4-2. 事例:癇癪で泣いているときにおやつや動画を与えてしまう

早く機嫌を直すためにお菓子や動画を渡すことは、親の疲労を考えると当然の行動です。しかし、これを繰り返すと子どもたちは「泣けばお菓子がもらえる」と誤学習してしまうリスクがあります。

  • 対応策:癇癪が収まった後に、気持ちを切り替えるために渡すのは問題ありませんが、**「いい行動をしたとき」**にご褒美として与えるようにしましょう。
    • 例:自発的に片付けをしたり、手洗い・うがいを行ったりした後に「これができたから、お菓子にしようか」と褒めて渡すことで、その行動をより自発的に行うようになります。
  • 視覚化:お菓子を途中でやめることが難しい場合は、予め適量だけを渡し、「あと何個」と見えるようにすることで、子どもは見通しを立てて納得しやすくなります。

5. 最後に:親自身の心のケアも大切に

子どもの癇癪への対応は、親にとって大きなエネルギーを消耗する行為です。癇癪も、その激しさからマイナスな行動と捉えがちですが、成長する過程ではとても大切です。

  • 自己肯定:大人は自分自身の関わりを見つめなおし、**「子どもの行動を観察し、良いところを見つける」**ことを大切にしましょう。ずっと子どもだけを見続けることはできません。ふと見た時にマイナスな行動が目についてしまうのは当然のことです。
  • 休息:親自身が心身ともに健康でいることが、子どもの安定した成長を支える基盤となります。十分な休息をとり、時には信頼できる人専門機関に相談することも忘れないでください。

子どもの癇癪は一時的なものですが、その対応の仕方次第で、親子関係の基盤が大きく変わります。感情を受け止めつつ、子どもの成長を見守る姿勢を大切にし、親子で困難を乗り越える経験を積み重ねていきましょう。そのプロセス自体が、子どもの未来の力となり、親にとっても成長の機会となります。

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