発達障害(自閉スペクトラム症・注意欠如多動症(ADHD)・学習障害など)の特性そのものを「一次障害」と呼びます。
これに加えて、環境や人間関係などから生じる心身の不調や行動上の困難を「二次障害」といいます。
二次障害とは、特性を持つお子さんが、学校や社会で「周りの人と同じようにできない」という失敗や、誤解によるストレスを何度も経験した結果、後から心や体に現れる病気や問題のことです。不安やうつ、不登校、暴れるといった形で現れます。
一次障害と二次障害の違い
まず、発達障害の困りごとを「生まれつきのもの」と「後からできた心の傷」に分けて考えましょう。
🌿 一次障害:生まれつきの「脳の個性」
一次障害とは、発達障害そのものです。これは、お子さんの脳の働き方が、多数派(定型発達)の方とは少し違うことによって起こる特性です。これは、努力不足でも、育て方が悪いわけでもありません。
- ASD(自閉スペクトラム症):人との会話やルールが苦手、強いこだわりがある。
- ADHD(注意欠如多動症):集中が続かない、じっとしていられない(多動)、思いついたらすぐ行動する(衝動)。
- LD(学習障害):読み書きや計算だけが、他の能力に比べて極端に苦手。
これらの特性によって、お子さんは社会の中で生きづらさを感じています。
💔 二次障害:失敗と誤解でできる「心の病気」
二次障害は、この一次障害による「生きづらさ」が、周囲の無理解や失敗経験という名のストレスにさらされ、心の許容量を超えた結果、後から現れる心身の不調や問題です。
分かりやすく言うと、特性は「合わないサイズの靴」のようなものです。二次障害は「合わない靴を無理して履き続けた結果、足にできたひどいマメや水ぶくれ」です。靴(特性)は変わらなくても、マメ(二次障害)は治療と休息で治すことができます。
主な二次障害のサイン
| 症状の現れ方 | 具体的な例 |
| 心理的な影響 | 強い不安、抑うつ(気分がひどく落ち込む)、自分を責める(自己肯定感の低下)。 |
| 行動・適応面の困難 | 不登校、引きこもり、非行、暴言や物を壊すなどの攻撃的な行動。 |
| 身体的な症状 | 不眠(眠れない)、摂食障害、頭痛や腹痛が続くなどの心身症。 |
なぜ二次障害が起こるのか? 心が悲鳴を上げるメカニズム
なぜ、二次障害は起こってしまうのでしょうか。それは、特性を持つお子さんの心が、常に頑張りすぎている状態にあるからです。
環境との「ズレ」による誤解
お子さんの行動が脳の特性から来ているにも関わらず、学校や周りの人から「サボっている」「やる気がない」「わがまま」だと誤解されてしまうことが、最大の原因です。
- 例:ADHDのお子さんが立ち歩くのは、じっとしているのが苦手な特性のせいなのに、先生から「授業を妨害するな」と叱責される。
- 結果:お子さんは、「自分は努力しても報われない」「自分は悪い子だ」と感じ、孤立感を深めていきます。
自分自身を責めてしまう苦しみ
ご本人が自分の特性に気づいていない場合、「どうして自分だけ、こんなに忘れ物が多いんだろう」「どうして人と同じように話せないんだろう」と、自分の人格が欠けているせいだと自分自身を責めてしまいます。
- 失敗するたびに自己否定感が強まり、「どうせ私なんか」という諦めが、うつ状態へと繋がっていきます。
- コミュニケーションの難しさや失敗の積み重ねが、慢性的な緊張状態を作り出し、心身が耐えきれなくなったときに、二次障害として症状が噴き出します。
年代別に見る「心のSOS」サイン
二次障害のサインは、年齢とともに現れ方が変わります。小さいうちからそのサインに気づき、早めに対応することが、深刻化を防ぐ鍵になります。
| 年代 | 見逃したくない「SOS」サインの例 |
| 学童期(小学生) | 「学校に行きたくない」と訴える、腹痛や頭痛が増える、急に泣きやすくなる、イライラして物に当たる。 |
| 青年期(中高生) | 不登校、引きこもり、無気力が続く、うつ病や不安障害の症状、自傷行為(自分を傷つける行為)。 |
| 成人期(大人) | 職場での適応が難しい、対人恐怖、うつ病の再発、情緒が不安定になる。 |
特に、内面化する症状(不安、抑うつ)は周りから見えにくいため、「最近、笑顔が少ないな」「以前より口数が減ったな」といった小さな変化に気づいてあげることが大切です。
二次障害の予防と対応
発達障害の特性は「治す」ものではありませんが、二次障害は「治す」「改善する」ことができます。大切なのは、環境とのズレをなくすことです。
お子さんを孤立させないための予防策
二次障害を防ぐ最大の力は、家庭の理解と適切な支援です。
もし特性が疑われるなら、専門機関で早く診断を受け、療育やカウンセリングなど、お子さんの特性に合った成功体験を積める環境を用意しましょう。
お子さん自身に「あなたは悪い子じゃない、脳の得意なことと苦手なことがあるだけだよ」と優しく伝え、自分の特性を言葉で説明できる力を育てます。これが、将来、学校や職場で支援を求める力に繋がります。
学校や職場に特性を説明し、「合わない靴を脱がせてあげる」支援を求めましょう。
例:ADHD傾向の子の机を静かな場所に置く、ASD傾向の子には指示を口頭ではなく書面にしてもらうなど。
失敗を責めるのではなく、ストレスマネジメントのやり方を教えたり、心理療法(認知行動療法など)を通じて、失敗の捉え方を修正する手助けをしましょう。
医療と家庭と福祉の連携
二次障害が深刻化してしまった場合、医療と家庭、福祉が連携して取り組むことが不可欠です。
心理療法:不安や抑うつが強い場合は、心理療法(心の専門家との対話)や、医師と相談の上で薬物療法を行うことで、心の緊張を和らげます。
行動療法:暴言や暴力といった行動の問題の背景にある原因(不安、不満など)を探り、その原因に対処する方法を学びます。
家族の役割:ご家庭では、「頑張りすぎなくていいよ」という安心感を与え、心の安全基地となることが最大の治療です。
まとめ:あなたは一人じゃない
二次障害は、発達障害が直接引き起こすものではなく、周囲の対応や環境によって生じる心の病気です。
親御さんがご自身を責めず、お子さんのSOSサインに目を配り、特性に合わせた優しい環境を整えることで、二次障害は必ず予防・軽減が可能です。
この困難を乗り越えるために、あなたは一人ではありません。地域の相談窓口や専門家を頼り、お子さんと一緒に、生きづらさのない未来を築いていきましょう。


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